房総の名刹 鹿野山神野寺

房総半島の観光名所として名高い鹿野山に行ってきました。有名なマザー牧場の近くにあって聖徳太子創建と伝わる名刹です。

ここは鹿野山全体が神野寺の境内となっています。この点、鋸山の日本寺と近いものがありますが、全山に見どころが散らばっている日本寺とは対照的に、神野寺は山頂付近に寺の建物が集中し、周りは杉の植林となっています。この山から切り出す木材が寺を維持する収入源となっていたそうですが、国産材が使われなくなって寺の維持管理には苦労が絶えないようです。

駐車場にクルマを入れて最初に見えるのは大きな山門です。2層構造になっているのは流石の格式の高さを感じます。

山門に納められている仁王像も流石の迫力。この山門は大正6年の東京湾台風によって倒壊したものを再建したそうです。その際に仁王像の胎内から運慶作と伝わる古い時代の面がでてきたということで、宝物殿でそれを見ることが出来ます。

山門の先にある本堂も非常に立派です。御前立として不動明王像が安置されており、その奥に本尊である薬師如来と軍荼利明王がありますが、こちらは秘仏とされており12年に一度、寅年の2月節分に1ヶ月だけ公開されるとのこと。

こちらは本堂の奥にある奥の院。白狐に乗った烏天狗(飯縄大権現)が祀られているそうですが、秘仏とされて年に一度、10月9日のみの公開とのこと。

この奥の院の建物は令和元年の台風15号によって大きく損傷しており、遠目にも屋根が歪んでいる現状が見て取れます。なんとか修復してほしいところですが、4年経った今でもこの状況というのは厳しい現実です。

境内のお庭や法堂なども見学しつつ、その先は道場と宝物殿(有料)です。お寺の復興のためにもお支払いして先に進みます。写真撮影はしませんでしたが、日光東照宮で有名な左甚五郎作の白蛇の木像があり、見ごたえは十分でした。

こちらは道場の入口になる表門。室町時代創建とされる茅葺の立派なもので重要文化財に指定されています。こちらも令和元年の台風15号で倒壊し、保存修理工事が行われて復旧されたばかりです。

表門を潜ると道場の建物まで一直線。両側に並ぶ石灯籠は東叡山の名が刻まれており、上野寛永時に由来があるものです。神野寺は徳川将軍家を祀る寺であったため、幕府との関係が強いのです。

道場の建物は年季が入っていて、それがいい味を出しています。こういう雰囲気の方が新しい綺麗なものより個人的には好みです。

面白いものとしては奉納絵馬があり、写真だと分かりにくいですが関流数学と書いてあります。難しい問題を解けましたという結果報告の奉納で、よくよく読んでみると円周率の問題などと書いてありました。

ちなみに神野寺は世間をにぎわせた事件を起こしています。昭和54年(1979)に境内で飼育されていた虎3頭が脱走して警察や消防団、猟友会が総出で対応する大騒動が発生し1頭捕獲、2頭射殺となりました。

神野寺は12支の動物を飼育していたそうで、その中の虎が脱走したとのこと。いまだに神野寺=虎のイメージがあるそうで、道場の中には飼育されていた虎の写真もありました。

道場の隣は和洋折衷の大正風な宿坊。現在、宿坊はやっていないそうですが、味のある良い建物です。こういう場所は本当に好きなので、壊さずに伝えていって欲しいと思います。